最高裁判所第三小法廷 平成2年(オ)851号 判決
上告人
遠藤辰太郎
被上告人
坂野貞吉
同
後藤健
同
坂野武雄
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
上告人の長男である遠藤一郎が、上告人の代理人として被上告人らとの間で本件各売買契約を締結するにつき、上告人から代理権を授与されていたものとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして、正当として是認することができ、原判決に所論釈明権不行使、審理不尽、理由不備の違法はない。
また、所論は、第一審の訴訟手続に一郎が上告人の氏名を冒用して訴訟行為をした瑕疵があるとして、これを維持した原判決の違法をいうが、記録に照らせば、上告人は、第一審判決に対して自ら控訴を申し立て、その選任した訴訟代理人が本案について弁論をして訴訟を遂行し、原判決を受けていることが明らかである。原審における上告人らの右行為は、一郎の第一審における訴訟行為に所論の瑕疵があったとしても、これを追認したものに外ならないと解されるから、右瑕疵は、原審において補正されたものというべく、原判決に所論の違法はない。
論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って若しくは原判決の結論に影響を及ぼさない部分について原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官坂上壽夫 裁判官園部逸夫 裁判官佐藤庄市郎 裁判官可部恒雄)
上告人の上告理由〈省略〉